久保こーじのBUZZ LEAGUE

大将　[diary] [編集]

「持っている大将の音源はカセットテープだな」と、押し入れの奥にしまいこんだ段ボール箱を引っ張り出す。段ボール箱開けた瞬間、現れたのが30年前のピックケース。ピックケースったって、ふりかけしまっておくようなタッパーみたいなヤツ。

大将のピック、まだこんなにいっぱい持ってたんだ。

「大将」こと桑名正博さんが亡くなりました。
脳幹出血で倒れてから3ヶ月。まだ59歳です。


ボクが音楽業界に入った最初の仕事が、桑名正博さんの楽器運び「ローディー」でした。17歳の時。高校3年生。学校が終わってすぐにリハーサルに行かなくちゃいけないから、武蔵小山から新宿御苑まで学生服を着たままリハーサルスタジオへ。何回か学ランでリハに行ったんだけど、さすがに桑名さん、「学ランでスタジオに来るな。なんか犯罪みたいだw」と笑って注意。年齢が若かったからだと思うけど、とてもとても優しく、いつもいろんなコトを教えていただきました。

未成年だったから、飲み屋に連れてってはもらわなかったけど、大将の家ではよく朝まで飲んでました(^^;) 大人の遊び方や振る舞い方、ミュージシャンの心得、なにからなにまで少年だったボクには強烈に刺激的でした。

5歳年上の兄が高校時代に組んでいたバンドが、高校卒業後、そろって桑名さんのバンドのローディーをしてました。「セクシャル・バイオレット・No1」が売れた頃だったと思います。ボクは中学生。桑名さんの音楽は良く聴いてました。ビートルズか桑名正博。時々サザンオールスターズ。あんまり公言してないけど、ボクの音楽のルーツの半分はビートルズ、半分は桑名正博。桑名さんの3枚目のアルバム「テキーラムーン」を毎日聴いていた中学時代でした。

兄のバンドメンバーが、バンド解散後も桑名さんの事務所にいて、「大学行かないなら手伝え」と桑名さんのローディーにボクを誘ってくださいました。1982年の夏くらい。

大将のそばにいたのは、今振り返れば短い期間だったけど、そりゃーそりゃー濃いぃ時間でした。最も多感な時期に、大将みたいな人と仕事してたワケです。辛かったコトも多いんだけど、一生の宝物に巡り会えた、そんな時間でした。


楽器車の2tトラックを運転して、全国いろんなところに行きました。

大阪はしょっちゅう行ってました。2tトラック満載で東名・名神高速道路を走って、片道8〜9時間。牧ノ原SAの粉っぽいカレーライスが好きでした。

大阪に住んでいた当時20歳の、大将のお友達の女の子を好きになっちゃったコトもありました。その娘には結局ふられるんだけど、大阪に行った時には良く遊んでもらいました。後で知るんだけど、大将が、「こーじが行くから遊んでやって」と声をかけてくれていたんです。ガキのボクより、大人の大将と遊びたかったでしょうに。「RAINな20才にさよならを」は、そんなあの娘を歌った歌でした。

東京生まれ東京育ちのこーじくんが、大阪をだいっきらいになったのは、んな失恋の「逆恨み」でした。


ボーカリストやギターリストとしての桑名正博さんがスゲェのはご存じでしょう。で、大将、よくリハーサルでドラムを叩くんです。それがまたスゲェうまいΣ(ﾟДﾟ)ｽｹﾞｪ!!

ドラマーとして世に出ていたら、きっと世界でもトップクラスのドラマーになっていたでしょう。カラダも大きいから音のパワーがあるし、リズム感が素晴らしくイイ。

ボクがバンドのリハーサルの時によくドラムを叩くのは、そんな大将を見ていたから。大将みたくは叩けないけど、あんな上手に叩けたらカッコイイなぁって思って。まだまだ足下にも及びません<(_ _)>


桑名正博さんのサポートバンドには、小島良喜さんをはじめ、上手なミュージシャンばかりでした。

B'zの松本孝弘さんも、一時期、大将のサポートをしていました。だから、まっちゃんとは、小室哲哉さんと出会う前に出会っていました。その当時から、めちゃくちゃギターの上手いおにーさんでした。

コーラスは妹さんの桑名晴子さんと坪倉唯子さん。うまかったなぁ、歌。大将はもちろん、はるちんや唯子さんなど、あれだけ歌の上手なボーカリストのそばにいれたのは貴重な経験だったと思います。


・・・


なんか書けないコトの方が多いな(^^;)
大将との思い出は、大事に大事に胸にしまっておきます。


偉大な、カッコイイ、大好きなミュージシャンがいなくなりました。
桑名正博さんに憧れてボーカリストを目指した、桑名正博さんとともに過ごした、それぞれの時間が手の届かないところに遠ざかります。呆然とするばかりです。

大将のおかげで、今こうしていれるコト、その感謝を伝えられません。

悲しくて悲しくて、それ以外感情を表現する言葉が見当たりません。


桑名正博さんのご冥福を祈ります。


さよなら大将。